病気対策

「ロングステイにおける懸案事項は?」というアンケートでは、「医療」は、「治安」、「言葉」とともに、必ず上位にランクされる関心の高い要素です。

旅先での主な死亡原因は「持病」

病気対策の最初に考えなければいけないのが、最も大切な命に関わる病気のことでしょう。(「救急旅行医学」といいます。)
「海外での重病に注意!」と言われると、多くの方はマラリアなどの感染症をイメージされると思います。
ところが、最近では海外での年間500-600人の日本人死亡者数のうち、マラリアでの死亡者は実は年間わずか0.8人程度。疾病での死亡・重症原因で最も多いのが、脳血管障害や循環器疾患などの心血系疾患(脳梗塞や心筋梗塞)なのです。(下記図参照)
つまり特別な病気ではなく、高齢者のもっとも身近な「持病」による死亡・重症事例が最も多いことになります。(約全体の3割)



出所 「2005年度 第43回全国大学保健管理協会 関東甲信越地方部会研究集会 報告書」


もしこれら疾患が海外で発症した場合、最も大切なことは、短期間で病院に搬送することです。
例えば脳梗塞の場合は発症から3時間、心筋梗塞の場合は6-12時間と言われています。この時間内(ゴールデンタイムと呼びます)に治療を受けることが出来れば、回復の確率は格段に上がるとのことです。
そのためにはどうしたらよいか? 
ずばり、すぐに救急車を呼ぶことです。
多くの日本人はまず日本語のわかる人、日本語のわかる病院に連絡するのが安心と考えますが、最も大切なことは時間との勝負です。
どの国でも救急車での重病患者の搬送先は一流病院と決まっていますので、まず救急車を呼びましょう。 
そのためには最低、救急車の呼び出し方はどこの国へ行ってもまず確認しておきましょう。

英文診断書の準備を

次に大切なのが、英文診断書を携帯しておくことです。 診断書にはいくつかタイプがあります。

◆「国際標準英文診断書」トラベルカルテ
すでに既往症があり、薬を服用中の方にお勧めです。 
シニアのもう一つのパスポートと呼ばれ、旅行用の国際標準の英語で書かれた診断書です。
海外旅行中にこの診断書を持っていれば「言葉の壁」を気にせずに、適切な病院で適切な処置が素早く行われ、軽いケガから重い病気まで、手後れになることはありません。 
内容は病歴、国際標準病名、定期的に飲んでいる薬のリスト、家族の病歴、アレルギー情報などです。
費用は2~3万円程度が目安です。
⇒お問い合わせは「オブベースメディカ」まで

◆メドレター
比較的健康な方のための診断書です。 
健康とはいえ、「不慮の病気や事故、ケガ」は常に起こりえます。
「メドレター」は、海外で病院にかかるとき、正確な情報を伝えて治療をスムーズにし、また留守宅との連絡機能も備えています。
費用は13,000円程度です。お問い合わせは上記と同様。

◆安全カルテ(日本旅行医学会監修)
費用や時間の問題で、上記の診断書の作成はちょっと・・という方でも、まさかの時に最低の健康情報は携帯したいものです。 そんなときには自己記入の「安全カルテ」がお勧めです。気軽にご自身で記載でき、海外での診察時に大活躍します。(価格2,000円程度)

◆アラートカード
薬物アレルギー、アスピリン喘息、ペースメーカー使用者、インスリン使用者、人工透析患者、在宅酸素療法患者などが対象

ロングフライト血栓症(旧「エコノミークラス症候群」)

ひざの裏あたりの静脈に血栓ができ、それが肺動脈をふさいでおこる病気で、飛行直後だけでなく、到着後2週間以内なら発症する可能性があります。
最悪の場合、血栓が心臓を通って、肺の血管の中に詰まり(肺血栓症)、呼吸困難・ 胸痛・失神を起こし、死亡にいたることもあります。
飛行距離5,000km、飛行時間6時間以上のフライトで発症する確率が上がります。

予防策としては
①こまめに水分を補給すること(酒類やコーヒーは利尿作用があるので逆効果です)
②なるべく通路側にすわり頻繁に離席すること、
③市販の「フライトソックス」を履く、などがあります。
 
60歳以上の太り気味の女性は、特にリスクが高くなると言われているので、注意が必要です。

感染症

◆狂犬病
昨年(2006年)フィリピンから帰国した方2名が、狂犬病を発症して死亡したことはまだ記憶に新しいことです。(日本で36年ぶりの狂犬病の死亡例) 
日本ではめずらしい病気ですが、東南アジアではごく一般的な難病で、インドでは年間3万人、中国で3,000人、フィリピンで300人の方が狂犬病で命を落としています。(アライグマ、コウモリなど犬以外の哺乳類からも感染します。) 
狂犬病の怖いところは、治療法が全くなく、発症すれば死亡率は100%ということです。 (全世界で、過去狂犬病が発症して生存した方は6名のみとのことです) 
従って予防する以外に方法はなく、同地域への渡航の前には予防接種を打ちましょう。
また、犬に噛まれてしまったら、潜伏期間(15日から1年程度)内に再度ワクチンを打つことが重要です。

◆デング熱
蚊によって媒介されるデングウィルスによる感染症です。 
めったに死亡にいたる病気ではありませんが、激痛をともない高熱を発する病気です。(別名「断骨熱」とも言われるくらいの痛みです。)
タイ、インドネシア、インド、シンガポール、モルジブ、フィリピン、ケアンズ、ハワイなどで発症しています。特異的な治療法はなく、安静と対症療法で対応するしかありませんが、通常1週間程度で自然治癒します。
解熱剤としてアセトアミノフェンが有効です。(日本旅行医学会 溝尾朗先生による)

◆下痢
感染だけが原因ではなく、香辛料の違い、油分の取り過ぎ、飲み水の違い(硬水には下剤の効果があるマグネシウムが多く含まれる)からも発症します。 
軽症の場合は、水分(スポーツドリンク)と塩分の補給をします。 症状がひどい場合は、クラビット、シプロキサンなどの抗生物質を投与します。(前述 溝尾先生による)
予防としては、石鹸での手洗い、ミネラルウォーターの使用、生ものを避けること。特に生卵(卵かけごはん)やカットフルーツ(水洗いされている)、ジュースやビール)にはいった氷(東南アジアではビールに氷を入れる習慣があるに注意することが必要です。