財政破綻というオオカミ

wolf日本の財政破綻の問題はこのサイトでも時々話題にしますし、最近ギリシャ問題をきっかけにして再び話題にする機会が多くなっている気がします。
私もそのリスクは何度も指摘していますが、だからと言って、必ず起こると断言できるものでもありません。できれば回避して欲しいと思っています。

実は日本の財政破綻の危険性は、私の記憶では1990年台後半くらいから何度も警告されてきた気がしています。なかでもA氏(あえて実名は伏せておきます)は、彼の何冊もの著書の中で、破綻の年限を指定して「予言」しており、結果的には一度も当たっていないため、日本破綻のオオカミ少年まで呼ばれるようになってしまいました。彼の主張どおりなら、もう日本は3回くらいは財政破綻していることになります。
警告としては間違っていなかったと思いますが、時期が早すぎたのと断定的に言い過ぎた、(それから論理もかなり強引だった気がします)ため、このような評価になってしまったわけです。でもその分本は売れたと思います。

ではオオカミはもうやってこないのでしょうか?それは先にも言ったとおり、可能性は十分あるとは言え、断言はできません。私もオオカミ少年になりたくないので(笑い)

偶然ですが、先日財政リスクに関する本を読んだので簡単に紹介したいと思います。「ソブリン・クライシス」と題したみずほ総合研究所編集の書籍です。ソブリンとは「国家の」という意味です。日本最大の投資信託「グローバル・ソブリン・オープン」(グロソブ)のソブリンと同じです。つまりソブリンクライシスとは国家の(信用)危機ということになります。

本書の大半は先日露呈したギリシャ危機とユーロ危機の分析に費やしていますが、最終章が「解剖 日本のソブリン・リスク」として日本の財政リスクについて書かれています。さすがに大手の調査機関が編集した本なので、他のこの手の本と一線を画しており、極めて冷静、客観的な分析がなされています。そう言う意味では大変参考になるかと思いますが、その分恐怖感や刺激が足りないかもしれません。特に今年の猛暑の夏には。。

ご参考までに、最後の数ページに結論がまとめられていますので、抜粋させていただきます。(少し長いです。)

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「第二のギリシャ」を回避するために

 ここまでの議論をまとめてみよう。目本の財政事情はギリシャに引けをとらないほど悪いが、豊富な国内民間貯蓄の存在と金融機関の国債選好度の高さという決定的な違いがあり、それが財政赤字のファイナンスを円滑にしている。将来を見通しても、経常黒字が維持され、その下で政府債務の累増が民間貯蓄の拡大によって補われる可能性が十分にある。
 しかし、民間貯蓄を運用する金融機関の国債選好度が将来にわたって高いままとは限らない。企業や家計、そして金融機関が国内市場に見切りをつけ、より高い収益を求めて資産を本格的に海外シフトさせる行動を起こせば、国債の安定消化がままならなくなる可能性は否定できない。日本が「第二のギリシャ」となる可能性もないわけではない。
 それを回避するためになすべきことはなんだろうか。

一つは、言うまでもなく、早期に財政健全化への道筋をつけることである、財政がグローバルスタンダードでみても健全な状態になれば、国内に国債消化を依存せずともよくなるし、そもそも国債の消化に関する懸念すら生じなくなるだろう。
 財政健全化の手段は様々にあるだろうが、結局のところ、決定的に重要なのは、選ばれた政策の組み合わせがプライマリー収支を確実に黒字にできるかどうか、である、現実的には、増税はもとより大幅な歳出削減も不可避である。より端的にいえば、消費悦を大幅に引きあげ、同時に社会保険費を大幅に削るしか、解は見つからないのではないだろうか
 ギリシヤの例で改めて明らかになったように、財政が破綻した場合、そのツケは国民が払うほかない。財政破綻を回避すべく政府が国際社会に支援を要請すれば、日本国債がデフォルトした場合の計り知れない影響を回避するために、IMF等を実行機関にして世界的な協調支援体制がとられることになるのだろう。しかし、それは日本国民が助かることを意味するものではない。政府に代わって国際社会が厳格な財政再建計画を練り、無慈悲にその実行を迫ってくるに過ぎない。国内民間部門の貯蓄は、半強制的に政府や海外に移転させられ、国民生活が一気に疲弊することになるだろう。
 財政の悪化は、政府の責任、政治家の責任であるが、結局はそれを選んだ国民の責任に帰する問題である。われわれは、これまで優遇されすぎていたことに気付く必要がある。コストを支払わずに便益を求めてきたことを反省し、その報いを受ける必要がある。
 実は、「財政再建は可能かどうか」という議論は、あまり意味を持たない。主体的に再建するにせよ、破綻に瀕して外国から強制的に再建させられるにせよ、最終的には国民が負担を負う形でツケを精算する以外に道はないからである。

 第二は、滞在成長率を向上させるべく懸命に努力することである。足元の潜在成長率の低下が労働投入量の減少に起囚していることに鑑みれば、特に国内人口の減少傾向をなんとしても反転させることが必要だ。日本経済の将来は閉塞感の塊となっている。ボーダーレス経済の中で家計も企裳も金融機関も資産を海外に振り向けようとしており、それが財政赤字の安定的なファイナンスに対する潜在的脅威ともなっている。国内人口が増加に転じ、期待成長率が高まっていけば、このような問題は自然と解消に向かうだろう、また、経済活動の活発化によって税収が増加することで、財政も健全化か可能となるのである。
 2010年6月8日、菅直人新総理は、就任会会見において、「強い経済、強い財政、強い社会保障の一体的実現」を新内閣の方針にすると述べた。社会保障の充実と政府偵務の削減は背反的課題であり、それを同時に達成できるほどの強い経済が実現できるのか、率直に言って疑問である.しかし、財政の危機的状況を正面から受け止め、「強い財政」というキーワードを政権発足当初から打ち出したことは、前向きに評価できる姿勢であろう新内閣の基本的方針がどう肉付けされ、実行されていくのか、腰の据わった経済・財政運営を期待したい。
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さて、この文章が書かれてから3ヶ月程度たっているが状況はどうでしょうか?なんと菅氏と小沢氏の総裁選の一騎打ちという予想外の展開を見せています。

それはともかく、本書の第一の方策(プライマリー収支の黒字化)に関してですが、先日来年度予算の概算要求がありました。過去最大の96兆円の概算要求で国債費は3.5兆アップの24兆円だそうです。まずびっくりです。それから参院選の増税発言でこけた菅さん、マニフェストの実行にこだわる小沢さん、どちらになってもこの道はきびしそうです。

第二の方策(経済成長)ですが、こちらも足元の円高で状況はますます悪化しています。今のところ菅さん、小沢さんどちらも有効な経済対策は提案できていません。こちらもかなり厳しいです。また先ほど、2009年の出生率は横ばいで、人口減が過去最大となるニュースが入ってきました。人口減にも歯止めがかかっていません。

残念ながら、足もとを見る限り、財政破綻(自主的、強制を問わず)のリスクは高まっていると判断せざるを得ない状況のような気がします。
そう言えば、オオカミ少年の話も、最後にはオオカミがやって来たのにだれも信じず、羊が全部食べられてしまうという悲しい結末でした。